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    Works 225
  • くろのいし3/13

    2011/06/05

    maro絵本

    と、そのとき、
    「あれ?どうしたんです?道にでも迷ったのですかな?」
    僕はどんなにこの言葉に救われただろう。

    顔を上げると、キチンとした身なりのきつねが立っていた。
    「こんなところに人が来るのは珍しいですね。
    立ち話もなんですから、ご飯でも一緒にいかがです?
    今、僕の知り合いがやっているレストランに 行くところなんです。」

    僕はついていくことにした。
    僕は彼がいなきゃ、不安におしつぶされて、 立つこともできなかっただろう。

    「今向かっている店は、名のあるレストランでしてね、
    そこのシェフは私の友人なんですよ。
    いつもお世話になっているんですよ。ハハハ。
    私の会社の従業員もよく使わせてもらっているんです。
    少しここから距離がありますが、そこの料理は絶品 なんですよ。」
    きつねはしゃべりながら、機嫌よく、 フンフンとリズムをとりながら歩いていた。



    しばらくして、
    「...しいの。...しいわ。」
    声が聞こえる。
    それはとても小さな、今にも消え入りそうで、 でも美しい歌うような声だった。

    「ちょっと見に行ってもいいですか?」
    きつねに聞くと、
    「ええどうぞ。」
    と、きつねは愛想よく答えた。

    僕は声をする方に近づいた。
    すると、湖の真ん中に、透き通った女の人が顔を出し、 お日様に向かってゆれていた。
    「この湖は私の涙。私も一緒にどんどんとけて、 この湖の水になるの。
    悲しいの...悲しいわ...。」
    彼女は独り言のように言った。

    「あなたはなぜこんな姿なのです?」

  • くろのいし2/13

    2011/06/05

    maro絵本

    ドドドドドド!

    「?」

    振り向く間もないまま、 僕は細い道に押されていく。

    「何だ?待ってくれ。僕はまだどっちに 行くか決めてないんだ。」
    周りを見ると、たくさんの羊たちが、 すごい勢いで細い道に流れ込んだ。

    そのたくさんの背中に僕は運ばれ、 太い道が遥か遠くにやっと見えるくらいの 場所まできてしまった。
    もう戻るには遠すぎる。


    僕を運んできたたくさんの羊たちは、 それぞれの囲いに帰っていった。
    この道を引き返した方がいいのか、 進んだ方がいいのか...。
    僕はどっちにも決められず、 道ばたに座り込んでしまった。

    このままずっと誰もこなかったらどうしよう。
    僕はひとりぼっちになってしまった。

    僕はあの太い道を歩くたくさん人たちの落ちこぼれ なんだ。

  • くろのいし1/13

    2011/06/05

    maro絵本

    突然、見たこともない道のど真ん中に僕はいた。
    道はまっすぐ続いている。
    ふりかえっても、まっすぐな道が続くだけ。

    「なんでこんなところにいるんだ?僕...」

    仕方ない。僕は進んでみることにした。

    気がつくと知らない人たちが僕の周りをまっすぐに
    歩いていた。
    だんだん人は多くなっていく。
    「あ、二手に道が分かれている。」
    太い道と細い道。
    周りを歩いている人たちすべてが、 太い道に向かって歩いている。

    「細い道には何があるんだろう。
    行ってみたいけれど、他の人と同じ方が 安心だし...どうしよう。」

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