岡田千夏

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京都府京都市

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  • 贅沢カリカリ

     うちのみゆちゃんふくちゃんは、あまり高くないドライフード(具体的にはスマックのかつお味かまぐろ味)を主食にし、それよりはもう少し割高なドライフードをおやつに食べている。お正月には、猫にとってお正月もなにも関係ないけれど、人間側の気分でおやつ用カリカリを食事のお皿に入れてやった。
     普段は、この贅沢カリカリは私の机の引き出しにしまってあるので、みゆちゃんはよくおねだりに、私の机の上に登ってくる。おねだりといっても何かするわけではなくて、ただ机の上に座ってじっと待っている。ふくちゃんは自分からねだりに来ることはないけれど、みゆちゃんが待っている姿を見ると、同じようにやってきて、机の上に並ぶ。
     狭い机の上に二匹がこちらを向いて座っているから、まるで自分の猫望が厚いかのような錯覚に陥るけれど、猫気があるのは私ではなくおやつなので、引き出しを開けてカリカリを出してやったら最後、食べ終わればもう用はないとばかりにふたりとも何の未練もなく、さっさと向こうへ行ってしまう。
     ときどき、しらばっくれて、ふたりともよく来たね、なでてほしいの?とみゆちゃんふくちゃんを両手で抱き寄せて、二匹のあいだに顔を突っ込んで頬擦りしたりすると、しばらくは我慢しているが、そのうち諦めて、やれやれ、そんなことではないのにな、と真意が伝わらなかった不満を顔に浮かべて、机を降りて行ってしまう。
     そういう複雑な表情をするのはみゆちゃんで、ふくちゃんは、なんだ、おやつじゃにゃかったのかー、ときょとんとした顔で、一緒に降りていく。
     狭い机に並ばれると、さすがに作業がまったく出来ないから、忙しいときには、さっさとおやつを出して、解散してもらうこともある。
     おやつのカリカリの種類はとくに決まっていなくて、粒の中に違った食感の層があるものや、乾しカマや煮干と混じったものなど、そのときの都合で買ってきたものをあげている。どれも見た目に美味しそうであるけれど、袋を開けると、やっぱりキャットフードのにおいがする。その中で、モンプチの、鰹節の混じったパックは、フード特有のにおいではなくかつおの香りがして、人間的にも美味しそうである。みゆちゃんふくちゃんも、熱心に鼻をくんくん近づけてくる。
     おやつの贅沢カリカリを食べたあと、みゆちゃんは、こんにゃのいらにゃい、とばかり、主食のスマックが入っているお皿の周りを、前足で砂をかけるみたいにがりがりかいた。「猫にかまけて」の町田康氏は、本を読んだのがだいぶ前で本も手元にないから少し記憶が曖昧だけれど、この行動を、もっと美味しいものがほしいけれど、もしもらえなかった場合はあとで食べなくちゃならないから隠して取っておこう、というように解釈していたと思う。
    こんな風に書いたら、スマックがいまいちみたいだけれど、そんなことは全然なくて、普段は、ふたりともかりかりとご機嫌な音をさせて食べている。
     実家のちゃめは、このあいだ鼻風邪を引いてすっかり食欲がなくなり、何とか食べさせようと美味しいものをいろいろとっかえひっかえあげたけれども、すぐに飽きて食べなくなって、もう年もそんなに若くないから、ちゃめびいきの父をやきもきさせたが、缶詰やレトルトパックのフードは飽きても、スマックは食べたらしい。きっと飽きの来ない味なのかもしれない。
     ちゃめももうすっかり元気になって、以前の食いしん坊に戻り、魚料理の出るたびに食卓に上って、食事を賑やかにさせている。

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