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文学・文芸 > 小説

プチ小説 納涼探偵 P その12

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プチ小説 納涼探偵 P その12

by ま ぜんた

  • iコンセプト

    プチ小説

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    その12 「オーラの基軸」

    ――――夕焼け空に、電車の音が響く。
     
     僕は今、迷いの中にいた。迷いながら小さな
    駅の改札口から出てくる様々な顔に目を通して
    いた。
    ――――人さがしである。
     僕は探偵社の社員ではあるが、これは仕事で
    はない。

    「あれ・・・、先輩じゃないですか。」
     突然話しかけてきたのは、後輩女性探偵のQ
    ちゃんだった。
    「誰かと待ち合わせですか?」
     唐突に話しかけられたので、少々あっけにと
    られてしまった。
    「実は、君を待っていたんだけど・・・。今、
    ちょっといいかな?」
     一瞬、彼女は僕の顔色を読み。
    「オッケイです。・・・この前の幽霊の件です
    ね。」そう小声で言って微笑んだ。
     僕には罪悪感があった。我が探偵社では、社
    員同士の個人的交友は禁止なのだ。
     そう思いつつも二人は居酒屋にいた。四人部屋
    の個室。そこに向き合って座り、テーブルには
    串物の大皿もりや生ビールの中ジョッキ三つほ
    どが並べられた。
    「これは彼女の分。」と、Qちゃんは誰もいない
    席にビールを置いた。
    「まずは、乾杯。」
     少々気になることはあるものの、軽くグラスを
    あてて、気を静めた。
    「で・・・、今、彼女、ここにいるの?」
    「はい。」
    「昨日は僕にも見えたんだけど・・・。」
    「まあ、それは、テレパスが弱いんですね。つな
    いだ方が早いかな。」
    「つなぐ?」
     言っている間に、実体の無い存在が姿を現した。
     半透明の彼女はビールのジョッキに口をつけて、
    何やらうなずいている。
    「おいしい?」と、Qちゃん。
    「はい。懐かしい味です。」
     ちゃんと会話をしている。もしや僕の脳が見せる
    幻覚の一種ではないか、と疑ってもみたのだが・・・。
    「Qちゃんは、子供の頃から見えていたの?」少し
    小声で問いかけた。
    「違うんですよ。実は大学の時、ちょっと・・・、
    ありまして。」

     彼女の話を要約すると、オカルト研究会に所属し
    ていた彼女は、心霊スポット巡りの最中に意識を失
    い、臨死体験をしたのだそうである。
     一瞬であったが肉体から幽体が出てしまい、急い
    で肉体に戻ったそうである。が、少しずれてしまった
    と言うのである。
     そのため霊感体質になったらしいのだが、語りなが
    ら酔いつぶれてしまった。

     本当の相談は、このあとだったのだが、また次の
    機会にしよう。 

                つづく。

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    その12 「オーラの基軸」

    ――――夕焼け空に、電車の音が響く。
     
     僕は今、迷いの中にいた。迷いながら小さな
    駅の改札口から出てくる様々な顔に目を通して
    いた。
    ――――人さがしである。
     僕は探偵社の社員ではあるが、これは仕事で
    はない。

    「あれ・・・、先輩じゃないですか。」
     突然話しかけてきたのは、後輩女性探偵のQ
    ちゃんだった。
    「誰かと待ち合わせですか?」
     唐突に話しかけられたので、少々あっけにと
    られてしまった。
    「実は、君を待っていたんだけど・・・。今、
    ちょっといいかな?」
     一瞬、彼女は僕の顔色を読み。
    「オッケイです。・・・この前の幽霊の件です
    ね。」そう小声で言って微笑んだ。
     僕には罪悪感があった。我が探偵社では、社
    員同士の個人的交友は禁止なのだ。
     そう思いつつも二人は居酒屋にいた。四人部屋
    の個室。そこに向き合って座り、テーブルには
    串物の大皿もりや生ビールの中ジョッキ三つほ
    どが並べられた。
    「これは彼女の分。」と、Qちゃんは誰もいない
    席にビールを置いた。
    「まずは、乾杯。」
     少々気になることはあるものの、軽くグラスを
    あてて、気を静めた。
    「で・・・、今、彼女、ここにいるの?」
    「はい。」
    「昨日は僕にも見えたんだけど・・・。」
    「まあ、それは、テレパスが弱いんですね。つな
    いだ方が早いかな。」
    「つなぐ?」
     言っている間に、実体の無い存在が姿を現した。
     半透明の彼女はビールのジョッキに口をつけて、
    何やらうなずいている。
    「おいしい?」と、Qちゃん。
    「はい。懐かしい味です。」
     ちゃんと会話をしている。もしや僕の脳が見せる
    幻覚の一種ではないか、と疑ってもみたのだが・・・。
    「Qちゃんは、子供の頃から見えていたの?」少し
    小声で問いかけた。
    「違うんですよ。実は大学の時、ちょっと・・・、
    ありまして。」

     彼女の話を要約すると、オカルト研究会に所属し
    ていた彼女は、心霊スポット巡りの最中に意識を失
    い、臨死体験をしたのだそうである。
     一瞬であったが肉体から幽体が出てしまい、急い
    で肉体に戻ったそうである。が、少しずれてしまった
    と言うのである。
     そのため霊感体質になったらしいのだが、語りなが
    ら酔いつぶれてしまった。

     本当の相談は、このあとだったのだが、また次の
    機会にしよう。 

                つづく。

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published : 2016/08/06

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