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Commentプチ小説という新たなカテゴリの提案。
その15「迷子の幽霊」1
―――――素朴な疑問なのだが、幽霊は昼間、何をしているのだろう。
ここに幽霊が二人いる。
細かい話は抜きにして、二十代の美女と、三~四歳の幼女の幽霊である。僕の向かいのソファーに並んで座っている。
「この子、病院から家に帰ろうとして道に迷ったみたいなんです。」と、美女の幽霊。
「うん。・・・それで?」
子供の方は、ソファーから宙ぶらりの足をパタパタさせながら無邪気に微笑んでいる。
「つまり、僕にこの子の身元を捜して家に連れて行ってあげてくれ。…と?」
「だって、かわいそうです。」
しかし、相手は幽霊である。お金も無ければ実体も無い。探偵を職業とする僕としては、ただ働きはごめんだ。
「幽霊が道に迷っても、空腹で死ぬわけでもないし、・・・ねえ。」
「冷たいんですね。」冷ややかな目。
生きた子供ならいざ知らず、幽霊を連れて行って親に引き渡しても、困惑されるだけだろう。
「ねえ、・・・ママは?」幼女は、いつの間にか涙目になっていた。
「ママは、先におうちに帰ったの。もうすぐ会えるからね。」彼女は優しく慰め、何かを訴える様な目でこちら見ている。
「いや、え――――。」僕は、観念した。
「君、お名前は?」
「りんちゃん。さんさいです。」小さい声ながらもはっきり答えた。
「りんちゃん。ちゃんと自分の名前、覚えているんだ。」と、感嘆の声をあげると、もう一人の幽霊の方が気まずい顔をした。
「君も、名前が無いと不便だよね。仮の名前を付けてもいい?」
彼女は、ちょっと嬉しそうな顔をして「お願いします。」と答えた。
「幽霊だから、幽子。で、どう?」
「ゆうこ。優子。裕子。有子。・・・いいですね。」
「じゃあ、幽子で決まり。」
彼女は満足げである。
では、気を取り直して。「りんちゃんは、いつ、・・・いつから幽霊になったの?」
「ゆうれいじゃないよ。りんちゃん。」
「・・・では、質問を代えます。何で病院に入ったの?」
「・・・くるまにぶつかったの。ボールをおいかけて、つかまえて、ドンってなったの。」
交通事故か。一応、検索をかけてみよう。パチパチとキーボードをたたき、それらしき記事を探してみた。しかし、見つからなかった。
幽子も興味津々でモニターを見つめていたが、ため息をついた。
つづく。
プチ小説 納涼探偵Pその15
by ま ぜんた
プチ小説という新たなカテゴリの提案。
その15「迷子の幽霊」1
―――――素朴な疑問なのだが、幽霊は昼間、何をしているのだろう。
ここに幽霊が二人いる。
細かい話は抜きにして、二十代の美女と、三~四歳の幼女の幽霊である。僕の向かいのソファーに並んで座っている。
「この子、病院から家に帰ろうとして道に迷ったみたいなんです。」と、美女の幽霊。
「うん。・・・それで?」
子供の方は、ソファーから宙ぶらりの足をパタパタさせながら無邪気に微笑んでいる。
「つまり、僕にこの子の身元を捜して家に連れて行ってあげてくれ。…と?」
「だって、かわいそうです。」
しかし、相手は幽霊である。お金も無ければ実体も無い。探偵を職業とする僕としては、ただ働きはごめんだ。
「幽霊が道に迷っても、空腹で死ぬわけでもないし、・・・ねえ。」
「冷たいんですね。」冷ややかな目。
生きた子供ならいざ知らず、幽霊を連れて行って親に引き渡しても、困惑されるだけだろう。
「ねえ、・・・ママは?」幼女は、いつの間にか涙目になっていた。
「ママは、先におうちに帰ったの。もうすぐ会えるからね。」彼女は優しく慰め、何かを訴える様な目でこちら見ている。
「いや、え――――。」僕は、観念した。
「君、お名前は?」
「りんちゃん。さんさいです。」小さい声ながらもはっきり答えた。
「りんちゃん。ちゃんと自分の名前、覚えているんだ。」と、感嘆の声をあげると、もう一人の幽霊の方が気まずい顔をした。
「君も、名前が無いと不便だよね。仮の名前を付けてもいい?」
彼女は、ちょっと嬉しそうな顔をして「お願いします。」と答えた。
「幽霊だから、幽子。で、どう?」
「ゆうこ。優子。裕子。有子。・・・いいですね。」
「じゃあ、幽子で決まり。」
彼女は満足げである。
では、気を取り直して。「りんちゃんは、いつ、・・・いつから幽霊になったの?」
「ゆうれいじゃないよ。りんちゃん。」
「・・・では、質問を代えます。何で病院に入ったの?」
「・・・くるまにぶつかったの。ボールをおいかけて、つかまえて、ドンってなったの。」
交通事故か。一応、検索をかけてみよう。パチパチとキーボードをたたき、それらしき記事を探してみた。しかし、見つからなかった。
幽子も興味津々でモニターを見つめていたが、ため息をついた。
つづく。
published : 2018/08/10