ま ぜんた

m
r

ま ぜんた

作家

  • 3

    Fav 1
  • 9

    View 36,492
  • p

    Works 55

WORKS

文学・文芸 > 小説

プチ小説 納涼探偵 P その1

9

View
191

3

Fav
0

1

Comment
0
  • C
    作品を拡大
  • B
    作品一覧

Other Works

jシェア

プチ小説 納涼探偵 P その1

by ま ぜんた

  • iコンセプト

       その1  殺意の炎症

    ――――人は、下らない事で殺意をおぼ
    える・・・。

     僕の職業は、探偵である。
     危険な仕事も幾度もこなし、何事にも
    冷静に対処してきた男だ。
     しかし、奴だけには特別な感情を抱
    かずにはいれないのだ。
     今夜、・・・明日の朝までには殺さ
    ねばならない。

     真夏の熱帯夜、僕は暗闇の中で、何
    もない空間をにらんでいた。
     聞こえる、あの超音波の様な音、い
    まいましい「ぷううーん。」と、いう
    やつだ。
     事もあろうにあいつは僕の耳の裏を
    刺し、逃亡した。プックリと腫れた耳
    は熱を持ち、恐ろしい痒みにおそわれ
    た。
     さらに、僕が睡眠に入るその瞬間を
    狙って、「ぷううーん。」と、痒みに
    耐えるその耳元でホバリングをするのだ。
     たまらず飛び起きて、明かりをつける。
     しかし、どこを探しても見当たらない。
    そんな事を2~3度繰り返すうち、痒み
    は怒りへ、怒りは殺意へと変化していっ
    たのだ。

    「蚊のやろう・・・。」
     ひとしずくの汗が、あごからこぼれ
    落ちた。

     僕は、これほどの殺意は、今まで一度
    も経験した事がなかった。

     そもそも、蚊という生き物、ただな
    らぬ危険なものではなかろうか。
     あの小さな体の中に毒をもち、世界
    中を飛び回り、時には恐ろしい病原体
    をばらまく。
     人類の天敵。と言っても過言ではな
    いのだ。
     今も、暗い物陰から僕を観察し、ほ
    くそ笑んでいるにちがいない。

    ――――しかし、探偵という職業は探
    すことに関してはプロである。

    「この俺を敵に回して、ただで済むと
    思うなよ・・・。」
     こんな独り言をつぶやきながらウチ
    ワを扇ぎだした。

     自分に向けてではない、見えない敵
    に向けてだ。蚊という生き物は、気流
    が乱れるとうまく飛べないのである。
    どこかの隙間に潜んでいる蚊が、風に
    吹き上げられ出てくるはずなのだ。
     ありとあらゆる隙間に向けて力いっ
    ぱいウチワを扇いだ。

    ――――しかし、出てきたのは大量の
    ホコリだけであった。

              つづく。

  • iコメント

     「プチ小説」という、新たなカテゴリーの提案。
     連続性のあるショートショートの様なものです。
     一枚のペーパーに収めるイメージです。

  • iライセンス

    設定しない

1

Comment

  • FAVをして作品の感想・コメントを残しましょう

    3
    FAV

jこのページをシェア

プチ小説 納涼探偵 P その1

by ま ぜんた

  • iコンセプト

       その1  殺意の炎症

    ――――人は、下らない事で殺意をおぼ
    える・・・。

     僕の職業は、探偵である。
     危険な仕事も幾度もこなし、何事にも
    冷静に対処してきた男だ。
     しかし、奴だけには特別な感情を抱
    かずにはいれないのだ。
     今夜、・・・明日の朝までには殺さ
    ねばならない。

     真夏の熱帯夜、僕は暗闇の中で、何
    もない空間をにらんでいた。
     聞こえる、あの超音波の様な音、い
    まいましい「ぷううーん。」と、いう
    やつだ。
     事もあろうにあいつは僕の耳の裏を
    刺し、逃亡した。プックリと腫れた耳
    は熱を持ち、恐ろしい痒みにおそわれ
    た。
     さらに、僕が睡眠に入るその瞬間を
    狙って、「ぷううーん。」と、痒みに
    耐えるその耳元でホバリングをするのだ。
     たまらず飛び起きて、明かりをつける。
     しかし、どこを探しても見当たらない。
    そんな事を2~3度繰り返すうち、痒み
    は怒りへ、怒りは殺意へと変化していっ
    たのだ。

    「蚊のやろう・・・。」
     ひとしずくの汗が、あごからこぼれ
    落ちた。

     僕は、これほどの殺意は、今まで一度
    も経験した事がなかった。

     そもそも、蚊という生き物、ただな
    らぬ危険なものではなかろうか。
     あの小さな体の中に毒をもち、世界
    中を飛び回り、時には恐ろしい病原体
    をばらまく。
     人類の天敵。と言っても過言ではな
    いのだ。
     今も、暗い物陰から僕を観察し、ほ
    くそ笑んでいるにちがいない。

    ――――しかし、探偵という職業は探
    すことに関してはプロである。

    「この俺を敵に回して、ただで済むと
    思うなよ・・・。」
     こんな独り言をつぶやきながらウチ
    ワを扇ぎだした。

     自分に向けてではない、見えない敵
    に向けてだ。蚊という生き物は、気流
    が乱れるとうまく飛べないのである。
    どこかの隙間に潜んでいる蚊が、風に
    吹き上げられ出てくるはずなのだ。
     ありとあらゆる隙間に向けて力いっ
    ぱいウチワを扇いだ。

    ――――しかし、出てきたのは大量の
    ホコリだけであった。

              つづく。

  • iコメント

     「プチ小説」という、新たなカテゴリーの提案。
     連続性のあるショートショートの様なものです。
     一枚のペーパーに収めるイメージです。

  • iライセンス

    設定しない

published : 2016/06/27

閉じる
k
k