毛糸の帽子をかぶり
毛糸のマフラーを首に巻く。
寒い冬の晩だった。
猫になって家を出て
犬になって夜道を歩いた。
途中、路上駐車のクルマから小銭を盗んだ。
深い意味はない。
盗めるから盗んでみただけ。
やがて、家のシルエットが見えてきた。
同じ中学に通う女の子の家。
垣根はなく、わけなく庭に忍び込めた。
裏庭に立ち、二階の窓明かりを見上げる。
カーテンに人影らしきものが映っていた。
いくら待ってもほとんど動かなかった。
あれは彼女の影ではなかったかもしれない。
人影ですらなかったかもしれない。
そもそも彼女の部屋がどこなのか
僕は知らなかった。
でも、その動かない影を
いつまでも見続けた。
雪が降り始めても
寒さは感じなかった。
もう二度と見ることはないだろう。
あんなに夢中になった影絵。