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CREATOR'S VOICE Vol.014 - 穴澤 郁雄

Profile

穴澤 郁雄

福島県出身のペーパークラフト作家。1971年生まれ。鳥類のペーパークラフト作品を発表しており、「スズメ」「ウグイス」などの小鳥から、「ハクチョウ」「オオワシ」など大型のものまで幅広く手掛けている。作品キット「もこもこ小鳥ペーパークラフト」は、HP「Ikuo Anazawa's paper craft」から購入することが可能。

Interview

-現在の活動内容を教えてください。

鳥類のペーパークラフト作品を制作しています。組み立てた完成品は、個展やグループ展で発表しており、代表作の「イヌワシ」(実物大)は、依頼を受けてさまざまなジャンルのイベントなどに貸し出しています。
ペーパークラフト自体は5歳からはじめて、中学校に入るまでは夢中でやっていました。その後は別のことに興味がうつったのですが、美大時代の作品制作で再びペーパークラフトにのめり込むことに……。卒業後はDTPデザイナーとして働き、作品制作も続けていましたが、「自分の気持ちに嘘はつけない」と退職。2007年からは作家としての活動を本格的に始め、今に至ります。

-福島県出身の穴澤さんは、2011年の9月にアメリカ大使館へ「ハクトウワシ」の実物大の作品を寄贈しています。これには、どのような背景があるのでしょうか。

東日本大震災によって被災し、不安な日々を送っていた東北の人たちを「トモダチ作戦」で救ってくれたアメリカに感謝の思いを伝えたかったのです。現在、私は神奈川県に住んでいますが、3月11日は新潟県で開催予定だった個展に備えて、実家のある福島県福島市にいました。震災後は、電気・水道などのライフラインが止まったことに加え、原発問題が発生。当然、個展は中止となりました。先行きの見えない不安な毎日でしたが、そんな私たちの希望となってくれたのがアメリカ軍でした。

「トモダチ作戦」と称し、一刻も早く被災地に駆けつけてくれた同軍。実家のある地域は比較的被害が少なく、直接支援を受けたわけではありませんが、復興への道のりを明るく照らしてくれた彼らに何かお礼ができないかと考えたのです。震災直後は「クリエイターには、直接命を救うようなことができない。自分のやっていることに価値はあるのだろうか」と疑心暗鬼になっていました。しかし、友人の助言もあって、自分には「作品で、皆の“ありがとう”の気持ちを形にすることができる」と気付きました。そうして、アメリカの国鳥でもあるハクトウワシの作品を寄贈したのです。

-「創作活動に対して疑心暗鬼になっていた」というように、今回の震災によって、自分自身と向き合うことになったクリエイターは少なくないと思います。穴澤さんが現在もクリエイションを続けている理由を教えてください。

今までは自己満足のために行なっていた作品づくりですが、「人のためにつくりたい」と思うようになったからです。作品を寄贈した時に感じたことですが、私たちは作品に思いを託すことができます。
私は東北の人間として、一人のクリエイターとして、被災地の皆さんに「上を向いて歩いていきましょう」と伝えたいのです。それに、飛んでいる鳥を見る時、人は空を見上げることができるじゃないですか。そういう点においても、鳥の作品はシンボリックなものだと感じています。

-作家としての新たなステージに立ったと言っても、過言ではないと思います。今後の展望についてお聞かせください。

これまでは実在する鳥をテーマに作品づくりを行なってきましたが、今後はメッセージ性を強調して、手塚治虫さんの漫画『火の鳥』に出てくる不死鳥のような、架空の鳥をテーマにした作品もつくっていきたいと考えています。永遠の命を持つ不死鳥のように、被災地を復興していこう、と。人々の諦めない気持ちを後押しするような作品をつくることが、自分にできること。鳥が空を飛ぶように、私の作品も東北・福島までそのメッセージを伝えていけると思っています。

(ライター 石川裕二)

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