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クリエイターと著作権 文:弁護士 益山直樹

第二回 「著作物」(各論1)

 前回は、著作権の対象である著作物と認められるため要件についてご説明しました。具体的に表現されたものが「著作物」であれば、原則としてその使用を著作権者が独占できることになるので、著作物性の判断はとても重要です。今回は、その著作物の類型についてご説明します。

著作物の例示

 著作権法は、表現態様別に、9つの類型を例として挙げています。その9つの類型とは、01小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物 02音楽の著作物 03舞踊又は無言劇の著作物 04絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物 05建築の著作物 06地図又は学術的な性質を有する図画、図表、模型その他の図形の著作物 07映画の著作物 08写真の著作物 09プログラムの著作物、です。

 ここで注意すべきことは、この9つの類型はあくまで例示であり、これらの類型に必ずしもあてはまらない作品でも、前回ご説明した要件を満たせば「著作物といいえますし、逆に、これらの類型に該当しても、「思想または感情を創作的に表現したものといえなければ、「著作物」とはいえないということです。
以下、個別に説明していきます。

言語の著作物

 小説、脚本、評論、詩歌、講演など、人が想像したり、考えたり、感じたことを言語で創作的に表現したものがこの類型にあたります。必ずしも媒体に文字で表わされている必要はありません。したがって、例えば講演会の内容を受講者が講師に無断で反訳し文章化して公表すれば、著作権侵害になります。手紙も言語の著作物になりえますが、時候の挨拶文や催告書など、定型的で表現の選択の幅が狭いものは、作者の個性が表れておらず創作性がないので著作物とは認められない場合があります。短いキャッチコピーなどでも、同じメッセージを伝えるのに表現の選択の幅が狭ければ、誰が作っても似たようなものになって作者の個性が表れず、創作性がないので著作物ではない、とされることがあります。

音楽の著作物

 およそ創作的に音を表現したものがこれにあたります。楽譜に固定されていることは必要ではなく、即興演奏によって作られた楽曲も、創作的に表現されたものであれば、音楽の著作物になります。歌詞が楽曲に伴って音として表現される場合、その歌詞も音楽の著作物になりますが、歌詞そのものは言語の著作物です。音楽の著作物で一番身近なものは、オリコンチャートを賑わしているような楽曲でしょう。音楽の著作物は、著作権の一種である演奏権の対象になりますが、演奏権を有しているのはあくまで作詞・作曲者であって、実演とは分けて考えなければなりません。例えば、歌って踊るけれども自分では作詞作曲をしないアイドルは、「実演家」であって著作権は持っていませんが、自分で作詞作曲をするアーティストは、実演家であると同時に著作権者でもあります。

舞踏・無言劇の著作物

 およそ身体の動きを創作的に表現したものがこれにあたります。舞踊の著作物となるのはあくまで振り付けですので、著作権者は振り付けを創作した人になります。踊る行為そのものは著作物ではないので、ダンサーは著作権者ではなく実演家です。自分で振付を作って踊る人は、舞踊の著作権者であり、同時に実演家でもあります。
無言劇とは、パントマイムのことを指します。

美術の著作物

ア 絵画、版画、彫刻その他、およそ美的鑑賞の対象として創作的に表現されたものが美術の著作物にあたります。漫画やイラストも、美術の著作物にあたります。

イ:応用美術 鑑賞の対象となる美的創作物である純粋美術だけでなく、実用目的の物品に応用される美的創作物である応用美術も、「美術の著作物」に含まれるかがしばしば問題になります。この点、一品モノの陶芸などについては、著作権法は「美術の著作物」には美術工芸品も含むとしているので、「美術の著作物」に当たることになります。この「美術工芸品」とは、「実用性はあるものの、その実用面及び機能面を離れて、それ自体として、完結した美術作品として専ら美的鑑賞の対象となるものをいう」と解されています。
しかし、一品モノではない大量生産品については、著作権法とは別に、デザインを保護する意匠法が存在することから問題になります。この点に関連して、チョコエッグのおまけであった動物や妖怪などのフィギュアの著作物性が問題になった事件において、平成17年7月28日の大阪高等裁判所の判決は、「実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となるだけの美術性を有するに至っているため、一定の美的感覚を備えた一般人を基準に、純粋美術と同視し得る程度の創作性を具備していると評価される場合には」美術の著作物として保護される場合があるとし、検討した結果、妖怪フィギュアについてのみ、著作物性を認めました。このように、大量生産品が美術の著作物に当たるかは、具体的事情次第といえます。

ウ:キャラクター マンガの登場人物は、著作物でしょうか。マンガは美術の著作物にあたることは前述しました。では、具体的なマンガ作品を離れて、そのマンガのキャラクターそのものを著作物ということができるでしょうか。
この点、最高裁判所は、ポパイ・ネクタイ事件の判決(平成9年7月17日)で、キャラクターとは、「漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念」であるとし、「一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画では、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、登場人物のキャラクターをもって著作物とはいえない」として、キャラクターの著作物性を否定しています。つまり、キャラクターそれ自体は、受け手それぞれの中で作られる抽象的なイメージであって、具体的に表現されたものではなく、著作物ではないということです。そこで、例えば小説の登場人物を自分なりのイメージでイラストを描いても、著作権侵害の問題にはなりません。
他方、マンガや小説の挿絵などで具体的に描かれたキャラクターの絵自体は、著作物ということになります。そこで例えば、マンガのキャラクターを無断でTシャツの絵柄に使用した場合、キャラクターの無断使用自体を理由としてではなく、マンガの絵を勝手に翻案したという理由で著作権侵害になります。したがって、いずれにせよ、著作権で保護された漫画のキャラクターを無断で使用することが、原則として許されないことに変わりはありません。
そうすると、コミケで販売されているマンガの同人誌はほとんど無断の二次的創作ということになりますが、権利者から黙認されているのが現状でしょう。同人誌から有望な作家が生まれていることからしても、二次的創作にある程度目をつむることで、著作権法の目的である文化の発展に寄与する場合があると考える向きもあります。

エ:書体 書道作品は、一般に美的鑑賞の対象となる純粋美術として美術の著作物となります。しかし、印刷用書体やデザイン書体については、一般的には、文字は基本的には情報伝達という実用的機能を持つものであって、美的鑑賞の対象として著作物性を認めて著作権者に独占させることは困難と考えられています。

 今回は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」である著作物にはどのような類型があるのかについて説明してきました。著作物の類型とは、大雑把に言えば、広い意味での芸術のジャンルだと考えてもらえばよいと思います。今回説明した文芸、音楽、舞踏、美術はどれも芸術のジャンルでしょう。例えば音楽にクラシックやジャズがあるように、それぞれさらに細かくジャンル分けできますが、大枠として捉えてもらえばいいと思います。次回も著作物の類型について説明していきます。

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